院長BLOG

2023.05.12更新

世間で名の知れた医者で、評論家として活動している医師というのがこれまでに幾人もありましたが、

現状では和田秀樹先生、養老孟司先生、過去には近藤誠医師(故人)の3名はいずれも、健康診断による病気の早期発見治療に否定的な意見を発信しています。

居酒屋トークで個人的に主張するには良いのですが、影響力が大きい人物には無責任な行為は控えて頂きたいといつも思います。

和田先生は精神科医です。老年医学も評論しているようですが、臨床医として生活習慣病や癌の診療に関わった実績は少ないでしょう。

養老先生は基礎医学の解剖学者に過ぎません。臨床経験はほぼゼロです。

近藤誠医師は故人ですが、放射線科医でした。生活習慣病が原因と思われる疾患で早逝されました。

和田先生は、70歳以後は健診など不要である、と述べています。彼はまだ70歳未満です。自分一人ですら未経験の年代のことを、健診とそれに引き続く疾患の治療にほぼ無関与でこれまで生きてきて、健診を否定するのはいかがなものかと思います。

養老先生は80歳を超えて元気でしたが、その後心筋梗塞となり、治療で復帰して、でも相変わらずタバコも吸っていると自慢していますが、所詮彼自身以外の臨床経験はほぼゼロです。

近藤医師は医療をほぼすべて否定した結果70歳そこそこで死去しています。

生き死には故人の自由ですので、長生きする努力をしない自由は結構ですが、有名人になって、影響力が大きい場合には、言動に注意しないと、エビデンスの後ろ盾のない発言は有害無益です。

 

健診の充実により、日本は世界でもトップレベルの健康寿命、平均寿命を勝ち得ました。老人の比率が増えることを悪いことだという考えもあるでしょうが、現在老人と言われる年齢の人は、自分が姥捨て山に行けと言われたらどう思うでしょうかね。

自分がたまたま健診など一切してこず、予防医療も拒否し、酒タバコメタボ生活に耽溺してても、運よくこれといった病気にならなかった人もあろうと思いますが、それは遺伝と幸運の賜物にすぎません。病気とはざっくりいって、10人に1人程度が罹患するものだからです。たまたま自分が病気知らずだからといって、今後もこれまで通り無事に老衰まで長命となるかというと、それは期待だけの話に過ぎません。その人にとっては病気発生率ゼロでも、他の人にとっては癌や心筋梗塞や脳卒中や透析腎不全のような重病に一度でも罹患したらそれは病気発生率100%になるのです。

単に確率の問題なのです。マクロで見れば他人事でも、ミクロで見れば一大事なのです。

かつて、シートベルトの取り締まりをしてこなかった時代で、かつ飲酒運転が厳罰となっていなかった時代は毎年交通死亡事故が3万人以上ありました。

いま、年間交通死亡事故は3千人程度です。シートベルトの着用が一番の要因です。

自分は運転が上手いから、シートベルトは要らない、それでもいままで無事故で生きてきた、という人は、単に確率的にラッキーだっただけです。しかし一度事故れば、シートベルトをしていれば助かった命を、あっけなく失うことになり、もしくは重大な後遺症が残り、一生後悔することになるでしょう。

健診を否定することは、シートベルトの恩恵の結果をも否定することと同類なのです。

こんな、ごくごく簡単なことが、著名人で賢いはずの先生方で全く分かっていないのはどうしてかというと、実地臨床に携わっていないからです。

実地臨床にノータッチの医者が、専門外のことを間違ったことを滔々と偉そうに語るなと、言いたいのです。

ある人は比較的若いのに、たまたま検便検査で陽性となり、精密検査をしたら大腸がんが初期段階で見つかりました。検診をしていなければ得られない恩恵を得たのです。

またある人は当院で健診とセットで推奨する超音波検査で無症状の腎臓がんが早期で見つかり、無事手術して元気に生存しています。

一般論でがんの発生率や生活習慣病由来の重大合併症を来たす確率はそんなに大きくありません。しかし実際に罹患した本人にとっては100%の確率なのです。

健診を受ける受けないは自由意志なのですが、専門外の有名人のコメントに踊らされないようにしたいものだとはつくづく思います。

投稿者: 三本木クリニック

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