爪白癬の診断は偽陰性が多いのが難点です。
見た目が爪白癬に見えても顕微鏡でみると菌体が見つからない、というわけです。
ですので、顕鏡検査だけでなく、問診や経過や肉眼所見を総合的にみて判断するのですが、偽陰性が多い理由は、爪という、硬くて分厚い標本だからです。KOH液により角質を溶解させて顕微鏡で見られるようにするのですが、それが迅速検査でやろうとすると、分厚すぎる検体の場合、ちゃんと確認できません。
にもかかわらず、実際の臨床では、足の爪の異常というのは、貝殻のように分厚く濁ってしまった状態で受診されるケースが多くて、それが慢性の外傷によるものか、アレルギー疾患によるものか、白癬やカンジダによるのか、鑑別が難しいのです。
試験薬に浸して、白癬菌が存在するかどうかを確認する簡便な検査キットもあるようですが、保険適応の面で、どうしてもまずは顕微鏡検査をする必要があり、それでも判定困難のときにのみ、そういうキットを使うことができるというルールがあるようでして、そうなると、二度手間になるので患者さんにも医師にも負担となります。
それで最近勉強会の内容から知った方法として、KOH液に3時間以上、例えば一晩なり浸漬しておいて、完全に爪がドロドロの液体になった状態で、改めて顕微鏡で確認するというものがあったのです。
早速それでやり始めたところですが、当然迅速結果ということは無理なので、結果は後日説明することになりますが、これまでに数例、実際に検査したところ、かなりクリアカットに判別できるように思います。
このようにして、一つ一つ、少しずつ診療のレベルを磨いていくことが、必要なのですね、、。