院長BLOG

2023.01.17更新

高脂血症を適正に治療した方が良い、というエビデンスはすでに確立し、標準治療ガイドラインでも明記されていますが、

そもそも、治療した場合と治療しない場合とで、毎年どの程度の確率で致命的な合併症を引き起こすのでしょうか。

それについては、すでにずいぶん前の2010年ごろ、JUPITERという大規模臨床試験が行われた結果で明確に示されています。

高脂血症をスタチン系治療薬で治療した群と治療しない群とで、実際に毎年何%の致命的合併症(心筋梗塞、脳卒中、腎不全)が生じるのか、を具体的数字でしめしたものです。

 

治療しなかった群では、毎年ごとのイベント発生率は1.45%。治療した群では0.69%。 相対的比較では2倍以上となっています。治療しない場合、治療している人よりも2倍、危険だということです。ただ、高脂血症の患者さんでは、毎年致命的合併症が起こるのがその程度の確率でしかない、ということも言えます。

5年単位でみた場合はどうだったかというと、その試験の結果では、治療した群では100人あたり4人が合併症発症し、治療しなかった群では100人あたり8人が発症した、ということになっているようです。

こうなると、ちょっと確率が高いと思うし、やはり5年単位でみたとしても大体2倍くらいの違いがあるのですね。

また、この試験とば別の、多くの臨床試験の論文を総括して検討したメタアナリシスの論文が後年発表されたものによれば、スタチン系治療薬によって、致命的合併症が2割減った、という結果もだされています。

それ以後、近年のデータでは、こういう、無治療群と治療群とのシンプルな比較臨床試験というのはほとんどなくて、たとえばすでに一剤治療しているところに、さらになにか治療を追加したらさらに生存率が上がる、という試験になっています。それは、高脂血症は治療したほうが良いという前提はすでに完全に確立したものだからです。何も治療しない、という群を設定することは倫理的に問題がある、というレベルにまでエビデンスが確立しているからです。

 

家族性の、つまり遺伝性の高脂血症というのは、若年者から発生するものですが、実際には中高年から高脂血症が露見した場合であっても遺伝的な要素は背後にあることがほとんどでしょう。そのなかで若年の時点で高脂血症が指摘されている体質の人は、より一層リスクが高いことは明白であり、その場合、とくに治療と監視が必要となります。

若年発症型であれ、中高年以後から発症するタイプであれ、ともかくざっくりいうと、毎年毎年無治療で放置していれば、大体1.5%の確率で致命的な脳心臓腎臓血管合併症が発生する、ということであり、単純計算でいうと10年後には15%、20年後には30%、30年後には45%、というように致命的合併症発生のリスクは蓄積されるということです。

ですから、当然のことながら、若い年齢で高脂血症があればあるほど、放置していれば平均寿命の80歳代まで平穏無事に生きられるとは言えなくなります。

コロナウイルスに罹患して死ぬ確率は、ウイルス株によっても違いがありますが、単純に1%とすると、高脂血症を放置して致命的合併症を起こす確率1.5%というのをどうとらえるべきか。そしてその予防を考えるに、、

コロナの予防としてはワクチンやらマスクやら消毒やら何かとマメに励んでいるが、脂質異常症の治療には無頓着で放置、というのはどう考えても整合性がない、ということになります。

今回のブログで一番意味がある内容は、JUPITER試験の結果、実際に毎年何%の人が致命的な血管合併症を起こすのか、という数字が示されているのだということと、その数字が一見少ないものの、蓄積すると馬鹿にできない、ということです。

実際には、高脂血症だけでなく、高血圧や糖尿病といったメタボ疾患が併発していることが多々ありますので、重大血管合併症の発生率は併存する持病があればさらに上昇するということになります。高血圧や糖尿病も血管に障害を与える病気だからです。

投稿者: 三本木クリニック

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