院長BLOG

2022.12.12更新

アナフィラキシーについて、その後いろいろ文献調査をすることによって、第一にまずやるべき治療がエピネフリン(アドレナリン)筋注であることが、改めて分かりました。

そもそも、アレルギー反応の著明なものをアナフィラキシーというのですが、典型的なパターンでは、まず全身の発赤や発疹と痒さが出現し、ついで呼吸困難や悪心嘔吐出現、最後には血圧低下ショック状態となる、という流れです。実際にはこれらが短時間にどんどん進行すると思っておいたほうが良い。

そしてこの病態で結果的に死亡することとなってしまう原因はなにかというと、かつては蜂さされによるものが一位だったのですが、近年では医薬品によるものが一位になっています。

つまり医療事故によって致命的なアナフィラキシーが一番起こりやすいのです。

実際にはアナフィラキシーの原因は食物アレルギーが一番多いのですが、致死的な結果になることは医薬品や蜂に比べればかなり少ないというデータです。

医薬品とは何かというと、やはり劇薬に属するものや生物学的製剤といったものが原因となるでしょう。

劇薬というとなにか特殊な薬品だけかと思いきや、意外に劇薬とされる薬は多岐にわたります。抗がん剤も劇薬ですし、解熱鎮痛剤の注射剤なども種類によっては劇薬です。

ともあれ、アナフィラキシーになってしまった場合、まずはその病態であろうと判断したならばすぐに第一にやるべきことは、文献的考察結果からいえるのは、エピネフリンを体重に合わせた量で筋肉注射する、ということです。

そして下肢拳上や呼吸確保、循環動態の把握と対応、静脈ルート確保、という順番になります。

エピネフリンの投与をセルフで出来る唯一の製剤がエピペン注なのですが、それによる有効性は80%とされています。

しかし今回文献を集める作業をして驚いたことは、実はアナフィラキシーとその治療に関しての文献というのは、甚だ少ないのだ、ということです。

当初は、アナフィラキシー患者に対して、気管内挿管をした群とそうでない群とで比較検討した文献はないか、と探し始めたのですが、そんな文献は世界中に全然ないようで、検索に全くひっかかりませんでした。

レトロスペクティブ研究のものばかりで、ようやくいくつか見つかった程度で、そのわずかな文献のみで、アナフィラキシー治療ガイドラインが作成されています。

つまりどういうことかというと、アナフィラキシーというのは、致命的な結果となることは日常茶飯事では決して無いこともあり、医師が一生のうちに一度も経験せずに終わるということもありうる一方で、出逢ってしまったならばそれはいきなり致命的な症例となりうる、という、非常に危険なものであり、だからこそ、事前学習が非常に大事だということです。

今回文献検索をする前には私はブログで、エピペンよりもまずは救急蘇生のABCだと記述したのですが、ことアナフィラキシーに関して言えば、まずはエピネフリン投与なんだ、ということが分かりました。ただし、単なるじんましん、とか軽症のアレルギー反応に対してエピネフリン投与をすぐにする、ということではなく、あくまでも、アナフィラキシーに対して、です。

そして、アナフィラキシー症例では、医療機関にかかるまでの間にいかにすぐにエピペン投与をするか、ということが、その後の症状回復に大いに関わる、ということもデータが示されていました。

 

投稿者: 三本木クリニック

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