院長BLOG

2022.11.16更新

アナフィラキシーとは、即時型アレルギー反応のうち、進行すると命の危険にせまられる病態を指します。

食物アレルギーによるものだったり、ワクチンによるものだったり、いずれにせよ外部因子による反応です。

実際の症状としては初期または軽症の場合には、口腔内がむずがゆくなったり腫れぼったい感じになったり、全身がかゆくなったりします。

それが進行すると吐き気が出現したり、息苦しくなり、血圧が低下、全身発赤または蒼白といった状態に進展します。気管支痙攣や肺浮腫による呼吸不全になったり、循環状態として血圧が測れないショック状態となると、意識消失にいたります。

皮下注射製剤に代表されるような、アドレナリンの投与によって、気管支痙攣の緩和、血圧上昇作用を得ようとするわけですが、あたかもその薬だけで解決するかのような誤解されている気がしますので、それは違うということを世間に分かっておいてもらいたいです。つまりマスコミは報道するまえに、医師に監修を受けてから正しい情報を発信するべきだということです。

救急蘇生のABCという見地から言えば、アドレナリン製剤を躊躇なく使うことももちろん必要ですが、第一に何をするかというと、人を呼び集めつつ、airwayつまり気道を確保することです。肥満体の人は簡単に舌根沈下で窒息しやすいので、臥床させて顔を横向きにして舌根沈下を防ぐ体位をとります。

下肢を拳上させて血圧低下した循環動態を補います。つまり心臓と脳に血液循環を集中させるためです。ショックとは、出血性でもないかぎり、過度に血管が弛緩拡張した状態や、血管透過性が急激に亢進して血管外へ血漿が抜け出てしまう状態ですので、相対的に少なくなった循環血液を重要な場所に集約させるのです。

その上で、breathつまり呼吸をさせる。これはマウスツーマウスでもいいですが、一番簡単なのは心臓マッサージをゆっくり大きめにするような形による胸郭運動を他動的にアシストすることです。

明らかに血圧が測れないとか、鼠径部や頸動脈の拍動が触知しないならば心臓マッサージの強さで胸部圧迫を繰り返す方法に移行します。これがcirculationつまり循環確保ということです。

点滴ルート確保はこれらABCの処置を最優先させながら同時進行で行います。

ワクチンなどによる重篤なアナフィラキシーなどというものは、比較的若手の医師や看護師の殆どは経験がありません。そんなにしょっちゅう出くわすような病気ではないのです。たとえ年輩の医師であっても、内科や外科のメジャーな科目以外の、例えば皮膚科や眼科といった科目では、救急蘇生行為など、まず未経験でしょう。

すべての疾患に対して経験がないと医者は医療行為をしてはならない、となれば、医療は成立しませんし、研修医はいつまでも素人のままに終わってしまいます。

一番言いたいことは何かというと、

アドレナリンの皮下注ですべて解決するかのような誤解を持たないこと

アナフィラキシーに限らず、呼吸不全、循環不全に陥った意識喪失患者に対しては救急蘇生のABCが基本であること

です。

道具や薬剤が一切ない状態であっても、本来は、理学的な対応だけでも十分回復を見込めます。AEDなどなくても心臓マッサージで対応可能なのです。しかし、麻酔科や救急をある程度一人前にやれるようになるまで研修をする、というプログラムはいまの医療研修制度にはありません。全身麻酔や救急外来をどれだけ何年担当するか、によって決まるでしょう。外科系医師ですらベーシックな麻酔や救急蘇生にほぼ未経験というままに医師人生を終えることすらあるのが、いまの若手世代や専門医重視の研修制度です。

また、ワクチンの集団接種会場での接種を、なぜ医師でなく看護師が行うのか、という点も前々からずっと疑問に思っています。毒物を投与するのに、医師が問診係で、実施が看護師というのはどう考えても逆でしょう。小規模会場で、医師と看護師の連携や信頼関係が確立された病院でなら理解できますが、知らない者同士が広い会場にその日だけ集まって、というその日限りのチームでは、やはり医師が毒物投与担当をすべき、というのが私の考えです。注射の仕方一つとってみても、ちゃんと解剖を理解して実行しているのか?ということは、経験不足な医師なら医師ですらあやうい面があるというのに、アルバイトの看護師が実施する、というのは、ちょっとどうなんだろうかと、思わなくもない。ただ、全国に多数ある集団会場で、一気に大勢の人々に接種する必要がある社会的状況においては、にわか仕込みのシステムで対応せざるを得ないわけで、結果として、どうしても稀ながらある一定の確率でリスクはある。

そもそも、ワクチンを3回以上接種していれば旅行代が半減できるというキャンペーンにつられて、にわかに接種希望者が増えた、という面も地味に重要な要素だと思うのですが、それは報道されませんね。

 

追記)

厚労省からの、日本救急医学会版アナフィラキシー対応図を添付します。この図のフローチャートで絶対的に不足しているのは、呼吸の確保、心臓マッサージについては一切記載されていない点です。医療従事者向けのものにしてはあまりにも内容が不足していることを指摘しておきます。

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投稿者: 三本木クリニック

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