昨夜、木曜の夜ですが、ひさしぶりに勉強会に参加してきました。
夜8時20分までの会だったので少ししか聴講できませんでしたが、それでも今回は面白い内容でした。
近年糖尿病に対する効果だけでなく、心臓や腎臓にも良い効果を発揮するため心臓病や腎臓病にも保険適応になったSGLT2阻害剤についてです。
今回は香川からはるばる薬理学の教授先生が名古屋に来られて、このSGLT2阻害剤がどのようにして腎保護に作用するのかというメカニズムを基礎医学の立場から研究されているというお話をされました。
SGLT2阻害剤は内服開始して1か月ほどは利尿効果がやや脱水になるほどに得られるのと、継続して服用することで平均して2,3kgの体重減少を得られるということはすでに知られていますが、利尿効果は2か月も過ぎると治まり、通常の尿量に戻ってきます。この機序が腎臓でどうなっているのかを解説されました。
この薬剤はブドウ糖を尿に逃がすことによって浸透圧利尿を来たすのですが、体はそれを脱水兆候と判断し、尿素が腎臓に集結して水分ロスをブロックさせるというのです。そのようにして尿量を通常に戻す、と。その働きをする尿素は肝臓でしか作られません。そして尿素の原料はというとタンパク質です。このたんぱく質はどこから来るかというと摂取した栄養からはもちろんですが、体内からだと筋肉から動員されます(運動と筋トレが重要であることはこういうところからも説明ができます)。肝臓で尿素がつくられるのを促進する作用を持つのは血糖上昇ホルモンであるグルカゴンや抗利尿ホルモンであるバソプレシンです。このようにして尿から水分やカロリー(糖)をロスすることを代償するように働くというのが、人間には備わっている機能だというのですね。
ちなみに、このように、渇水条件において脱水から身を守る機能は、脊椎動物だと両生類や爬虫類に備わっているそうで、この機能は「夏眠」という現象の一部だそうです。冬に冬眠するのの反対語で、夏の渇水期に、両生類のたとえばカエルが命を守るために備えた機能だというのです。水分やエネルギーロスを防ぐのです。
それに類似した機能を人間も持っている、というお話でした。
こういう機能を有しているからこそ、SGLT2阻害剤を毎日飲み続けていて毎日延々とカロリーロスを呈していても、体重がどんどん減ることにはならないし、脱水がどんどん進むこともなく通常状態に保たれるわけだということです。
生物というものは、ありとあらゆる機構でもっていろいろなパターンでホメオスタシスを成立することができる、本当に凄い存在だなあとつくづく思います。作ろうとしたって生命や生物は作れない、というのはもうその機能がものすごすぎるからなのですね。