このところハイブリッド形式ながら研究会講演会が増えてきました。私は現地でなるべく聴講したい派なので、よほどでなければ現地開催されるものを選択して参加します。
昨夜も「糖尿病のトータルケアを考える」という会に参加してきました。
糖尿病といえば血管を障害させる疾患の代表ですが、ことに昨夜は、脳梗塞のことについて、基本的なことから最新の知見まで分かりやすく講義してくれた、ばんたね病院脳神経内科の伊藤教授の講演が一番印象に残りました。
ワレンベルグ症候群というのがあって、ずっと昔国家試験のころに覚えた名前だったのですが、延髄の一部が脳梗塞にやられると片側の口囲と手先のしびれ症状が出現する珍しい症状を呈するのですが、他にも顔の麻痺の出方で中枢性か末梢性か判別するにはおでこのシワを見ればいいとか、動眼神経がやられるとそれは中脳領域の障害を指し、その場合独特の目の他覚的症状を呈する、など、神経内科の面白さは根本はこういう診断学にあるんだったなあ、と思い出させるいろいろを改めて教わりました。
我々開業医では、細かい部位の診断までは必要なく、とにかく紹介すべき症例かどうかを判定することが重要で、それはどうしてかというと、実は脳梗塞でも早期発見早期治療するとしないとでは大きな違いがでる場合もあるためです。
その他にも、心筋梗塞や狭心症で血管カテーテル治療を受ける半数症例が糖尿病を持病に持つんだ、という話を群馬大学教授の石井先生がわざわざ群馬から名古屋に出向かれて講演されました。
コロナのことばかりがクローズアップされる昨今ですが、先生曰く、コロナ死者は日本ではこれまでのトータルで2万人ほどだったと。しかし心筋梗塞や脳梗塞で死亡するのは毎年毎年その何倍もあるんだ、ということで、生活習慣病である、高血圧、脂質異常、糖尿病の治療や予防対策が本当に大事なんだと。
6月から住民健診が始まっています。コロナの昨年やその前などは当院で検診を受けられる方が減っていた印象があります。1、2年なんとなく健診せずに済んでしまうと、その後も面倒だからイイワ、と、あっという間に5年ほど経過してしまうことはザラにあります。気が付けば進行がん、脳梗塞や心筋梗塞で、いきなり生命の危機や後遺症を背負わねばならないことになってしまいます。
大腸がんなどは検便だけでもかなり優秀に判別できるスクリーニングができます。胃がんについては、当院では最新の胃カメラに新調し、解像度が向上しております。また、これまで通り、経鼻内視鏡では最も細いタイプのものを採用しておりますので皆さん比較的楽に受けられています。
他院で毎年のようにバリウム検査をしていたのに進行食道がんになるまで見つからず、あっという間に薬石効なく亡くなられたという症例があったそうですが、食道がんは早期発見しなければ通常は治せない悪性度高い癌なのですが、これこそ胃カメラでないと早期発見できないジレンマがあります。ゆえにバリウム検査はあくまでも胃がん検診の目的のみなのです。食道がんも見つけたければ胃カメラしかありません。
まだ健診期間は始まったばかりなので、ぜひ胃カメラもエコーも含めた検診をうけましょう。当院では乳がん検診もエコーによって行うことができます。健診の本当の価値は70歳代後半から高まります。日本の平均寿命が90歳へ向かっている現代において、いろいろな寿命についての考え方はあろうかと思いますが、いま現在75歳だとして「あと2年後にこの世からおさらばする、というのもちょっとまだ惜しいなあ」と思うのならば健診をしておきましょう。