院長BLOG

2022.06.08更新

昨夜は愛知医大主催のウェブ勉強会に参加しました。

認知症の内科治療、臨床心理査定、認知症周辺症状の治療、という3演題です。

ことに、認知症の周辺症状に対する治療というのは、実際に認知症患者さんを治療していくうえで、随伴症状と言えども、実は最も重要な内容だと思います。介護や世話をする人にとって、非常に厄介な症状が、この随伴症状群だからです。

毎回、認知症の講演会に参加するたびに、講師の先生は認知症治療ガイドラインを紹介されますし、認知症の治療は早期に開始する、それが薬物治療と非薬物治療と同時進行で、ということを言われます。

しかし、実地臨床では、他院の先生方の処方を見ていると、どうもそういう対応や治療をしていないケースがあります。ある事例では、当院で患者さんから相談をうけて専門医に紹介して、検査の結果、アルツハイマー認知症と確定されたのに、治療はしない、という結果に終わったことがあります。

このケースについては紹介元である私としても納得がいかなかったので、後日問い合わせをして確認したのですが、投薬方針としなかった理由についてはいまいちはっきりとした回答をいただけませんでした。結局のところ、認知症の主症状である記憶力障害、考察力障害といったものを主として治療するのが認知症の薬の主たる役割なのですが、それを投与せずに、「随伴症状で困った症状がないから」ということで、おそらくその専門医の先生の認識では、随伴症状があれば治療をするが、そうでなければアルツハイマー認知症であろうとも薬物治療を要さない、と考えているのでしょう。

しかしそこは矛盾があって、そもそもアリセプトを代表とする各社認知症の治療薬というのは、基本は記銘力障害を治療する薬なのであって、随伴症状を改善する効果というのはおまけ的な位置づけとなっているのです。随伴症状BPSDに対応する治療薬というのは症状ごとにいろいろあって、今回の講演でも「かかりつけ医のための、BPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」というのが紹介されていました。つまりこの症状についての治療というのはまた別分野の勉強が必要なのです。いってみれば精神科の領域だともいえます。このガイドラインについては私も入手しましたので、じっくり勉強しなおしてみます。

ともあれ、私の意見としては、認知症治療薬は、診断がつき次第なるべく早めに投与開始して(ただし、誤診しないように細心の注意が必要)、高度の認知症になってしまったり、最初の診察の時点で無治療で高度の認知症となっている場合にはむしろ投薬はしないか減薬する方向で、と思っています。高度の認知症とは、完全に寝たきりとか、服薬もできないとかの、それが例えばそれまでにいろいろと抗認知症薬を投与していても高度の認知症症状が改善しない場合のことです。

そういう症例に、無理やり服薬させても仕方がないのですが、そうではない、まだ初期から中等度の時期というのが、一番治療する価値があると思うのです。

なのに治療投薬しないケースが散見されるという、そこのところがどうもいつも釈然としないので、ガイドラインや講演では教科書的なことを言っていても、実際にはどうなんだろうかという思いが払しょくできないのです。

それで今回はそのあたりの質問を投じました。メールでの回答待ちとのことですので、期待しています。

いまや、町のかかりつけ医が一番、認知症の最初のゲートに位置している立場だと思いますので、このような勉強会は機会あるたびに参加して知識のアップデートを重ねていきたいと思います。

投稿者: 三本木クリニック

  • まずはお気軽に
    当院へご相談ください
    内科/小児科/肛門科/外科/形成外科/皮膚科/美容
  • common_tel.png