土曜の午後から、医療安全の講習会に参加してきました。今回のテーマは薬にまつわる内容で、名古屋大学病院の患者安全推進部の梅村先生による講演です。
「くすりはリスク」というキーワードをたえず忘れないようにして、誤投薬、誤処方といったインシデントをいかにして防止するか、ということを主として講演されました。
施設の規模が大きくなればなるほど、そしてシステムやルールが複雑になればなるほど、エラーやミスがでやすい、ということは、大病院ならではの問題だろうと思いましたし、大病院では抗がん剤などのような、劇薬というか毒薬というか、そういうハイリスクの薬を用いた治療を最先端で行なっているので、ミスが重大な結果につながりやすいということもあるだろうと感じました。コンピュータ管理の電子カルテは便利な反面、添付文書をそのまま入力されたソフトでは、無用なアラートがたくさん出過ぎて、オーダーする医師にとっては、本当に重要なアラートが見過ごされてしまうという事例もあることなどが紹介されました。
当院のような小さい診療所ではどうかというと、たとえばワクチンの投与間隔が適正かどうか、とか、薬局への処方内容ことに日数や分量を間違えてしまったとか、そういうことが普通にあり得ることだと思います。外来診療ですから、さほど劇薬的なものを処方することはほとんどありませんが、劇薬でなくとも、誤処方を防ぐためにはどうするべきか、いろいろと考えなければならないと思いました。患者さんの健康被害につながるようなミスがないからといって、誤処方はあってはならないことなので、そのあたりは薬局との連携をいかにしてダブルチェック機構をレベルアップするとか、なによりも私自身のオーダーの時点でセルフダブルチェック機構を構築する必要があると思いました。
また、お薬手帳を持参されない患者さんが多いなか、不用意に言われるままに薬を出さないことも重要だし、不要な薬はなるべく削除するように絶えずベースとして考えながら毎回の診療をすることも重要だと思いました。老人の場合には薬を中止するのも徐々にしていかないとホメオスターシスが崩れて体調悪化を来たすことがあるので、減薬するのにも注意が必要です。
複数の院所で長年処方されていた薬を、当院で通院するからということで当院で統一処方した際に、実はあちらの大学病院からでていた薬と、別の大病院ででていた薬とが併用禁忌だった、という事例がありました。それは、いままでの主治医が各々ともに、患者さんのお薬手帳を確認していなかったのだろうということと、もし確認していたとしても、併用禁忌だと知らなかったのだろう、ということが推察されました。ただ、併用禁忌といっても実際にはその薬の有用性があって、副作用が皆無だったために事なきを長年得ていた、ということです。結局当院では、支払基金に事情を説明して、投薬量を減らすが併用は継続するという苦肉の策を採用しました。このように、専門医ですら長年知らずにそのままだったということもあるのです。もう少し患者さんの他院での処方治療内容に関心を持つべきだと思いました。
こういうことなどあれこれ見聞きしたり考えたりすると、おいそれと薬をバンバン処方することが怖くなるほどだと思わなくもないです。当院では電子カルテで併用禁忌や投与量の限度を超えた場合とか、疾患に対する禁忌薬といったものがある場合、ちゃんとアラートがでるようになっています。
今回講演された先生の所属する大病院のオーダリングの場合、疾患に対する禁忌薬のアラートがでないそうで、それはソフトが悪いのではないかなあと思いました。
大病院だからといって、必ずしも素晴らしいシステムやソフトで固められているかというと、実際全然そうでもない、というのは、東大、名大の大学病院で勤務した経歴の私から見る率直な感想です。もっとも、私が在籍していたのはもうずっと昔のことなので、いまはそんなことはないだろう、と思っていましたが、今回の講演を聴いたら「あれ?」というようなこともありましたので、所詮はミスする人間自体は変わらないんだなあと、、、。私の著書の第一巻だかに書いた内容にもこういったことについてはたしか記述があるように思います。まだアマゾンで売れ残りがあるようなのでもしよろしければご購入ください。アマゾンでの販売は間もなく終了となります(第二巻はまだ1年ほどアマゾンで購入できます)。
最後が宣伝になってしまって恐縮ですが、ともあれ、今回の勉強した内容を日々の臨床、診療に役立てていきます。