院長BLOG

2021.11.21更新

昨日は医師会の集まりがあって、そこで貴重な講演会がありました。

藤田医大の循環器の先生お二方による講演。

まず、末期重症心不全についての話で、埋め込み型人工心臓の実際といったところが主たる内容でした。日本では心臓移植が実質行われていないに等しいため、この人工心臓が、患者さんによっては5年以上も稼働していることもあるそうです。なかなかすごいことです。そのようにして移植を待っているということですが、その移植のチャンスがなかなか来ないというわけですね、、。

この1つめの演題のとき私が質問したのは、人工心臓に至る前に一時的使用をする、いわゆるECMO、これはコロナ肺炎でよく聞いた言葉ですが、これ、実際には私が昔若いころ、厚労省の主催で何日か泊まり込みで麻酔科救急研修を受けた時に講義で初めて聞いて知ったPCPSというのとほぼ同義だというんですね。ECMOは本来は心臓外科的な手術を施して設置する人工心肺で、PCPSは鼡径部の大腿静脈から経皮的にアプローチしてやる手法、ということのようですが、実際にはECMOと称してやっていることはPCPSと同じことだということで、つまり、開胸手術でない手法でやっている、というわけです。ならばどうして同じような意味なのに別の言葉があるのか、いまはPCPSという言葉で言わないのかと訊くと、「PCPSは日本が発祥の言葉だから、世界的には使われていない言葉」なんだというんですね、。そこはなんだか忸怩たる思いが沸きますね、、。

ECMO:体外式膜型人工肺。Extracorporeal membrane oxygenation。肺だけを補助する場合には静脈から引いて静脈に戻す。心臓を補助する場合、静脈から引いて動脈に返す。

PCPS:経皮的心肺補助装置。Percutaneous cardiopulmonary support。こちらのほうが分かりやすいと思うんですが。

 

2つ目の演題は心不全の新しい薬物治療についてでした。以前ブログでも紹介した、ARNIというタイプの心不全治療薬についての話もまた出てきましたし、それ以外にも、最近のトピックとしては、もともと糖尿病治療薬であるSGLT2阻害剤が、いよいよ心不全の薬として認可されたということで現在2種類のメーカーのものが適応となったそうです。この薬、有名な大規模臨床試験のEMPA-REG OUTCOMEという試験の結果をもとに適応拡大となったわけですが、本来糖尿病の薬なんだけれども、糖尿病の合併症の先にある、心臓血管イベント死を明らかに有意に減らした、という画期的な薬なんですね。しかも、この薬、べつに糖尿病を持病にもたなくても心不全の治療として投与できるようになった、というのが最近のトピック、というわけです。実際この薬は、血糖値が高くない人に投与したからといって、低血糖を起こすようなことは一切ありません。それでいて、糖尿病の人には、とくにHbA1cの数値がヒドければひどいほど、効果を大きく発揮するという、それもなかなかすごい薬です。このSGLT2阻害剤の糖尿病に対する効果の検討については当院での少ない症例検討でも(当たり前といえば当たり前なのですが)有意差をもって証明されています。その報告は以前のブログで紹介済みです。

他にも、心不全の入院回数を減らす効果が判明したというイバブラジンという薬は、ただ単に頻脈性心不全の頻脈だけを抑える効果だけを発揮して心不全の増悪を回避するそうです。

いろいろな新しい薬がでてきて、喜ばしいことではあります。

ただ、心不全が再燃して入院してしまう例の大きな原因として、食事(塩分制限できていない、水分制限できていない)の問題や、服薬をちゃんとしていないといったコンプライアンス不良であることが一番比率が高く、ついで、呼吸器感染などを契機にして悪化するという原因となっているそうです。生活習慣と服薬コンプライアンスは自宅にいれば患者本人しかできないことですからね、、、。

従来は心不全といえばACEブロッカーやRAS系阻害剤、βブロッカーの投与で有意に予後改善するということとなっていますし、うっ血性心不全の治療には利尿剤は欠かせないのですが、利尿剤は諸刃の剣の側面もあって、必要最小限にしておくべきで、かつ、できればロングアクティングタイプのものが心臓に優しい、となっています。いずれにせよ、生活習慣、服薬が一番重要だということにはちがいありません。

 

まあこんなふうに、いろいろとどうしても新しい知見が得られてしまいます。日々アップデートして、臨床現場に生かしていきたいと思います。

 

投稿者: 三本木クリニック

  • まずはお気軽に
    当院へご相談ください
    内科/小児科/肛門科/外科/形成外科/皮膚科/美容
  • common_tel.png