院長BLOG

2021.11.11更新

先日行われた消化器病関連学会での教育講演の内容から、

本邦でのピロリ菌に関する新しい知見についてまとめておきたいと思います。

1.以前は胃がんの原因の99%はピロリ菌の感染によるものとされており、たとえば血液検査でのピロリ菌抗体の有無とペプシノゲンのプロファイルによる組み合わせ診断(ABC分類)によって、判定Aつまりピロリ菌の感染もなく胃炎もない、と判定される場合には、胃カメラなど精査をする必要はほぼない、とされていたが、近年ではピロリ菌感染に関係のないde novo癌が、報告にもよるがだいたい5%前後で発生するようになってきた。よって、胃カメラやバリウム検査を行わない採血だけのABC分類では完璧といえないことが分かってきた。

2.人間ドックでしばしば行われる、ヘリコバクターピロリ抗体では、一般的には現時点での感染を示す、と言われているが、実際にはそうではなく、現時点での感染か、過去の感染(現時点では除菌すみ)なのかを断定できるものではない。現感染かそうでないかについては、胃カメラを行うか、尿素呼気テストを行うことでしか確定できない。また、ドックで行われるヘリコバクターピロリ抗体検査はLZ法とEIA法とがあり、EIA法での検査であれば誤差は少ないが、LZ法では除菌確認後なのに高値を示したり、一度も感染したことのない症例でも陽性にでてしまう偽陽性となることがしばしばある。

3.新しい知見ではないが、再確認しておくべき事項として、ピロリ菌を除菌したからといって、癌のリスクがゼロになるわけでは決してない。発癌リスクは3分の1になるだけである。よって、除菌後も定期的な胃がん検診を行い続けるべきである。

4.除菌後の胃がんの早期発見はえてして困難である。それは胃粘膜の凹凸の程度が除菌により軽減するからである。浅い陥凹に発赤を伴う程度の所見のことがしばしばあり、よくある胃炎との鑑別は通常の観察では不可能とさえ言える。よって、これからは拡大ピットパターンと偏光ライトNBI(narrow band imaging)による観察が必要となるだろう。

5.萎縮性胃炎の8%はヘリコバクターピロリ菌の偶然な除菌によるものである。つまり、別の疾患で抗生剤を使用した結果、たまたま併在していたピロリ菌も除菌された場合、である。もしくは自然治癒力によるもの、もしくは(これは個人的意見であるが)ヘリコバクターピロリ菌のエサとなる粘膜部位が食いつくされたために菌が自然消失したか。これも個人的な意見ではあるが、実際には8%よりも多いように思う。

 

以上が新しい知見として重要と思われました。当院でも近日胃カメラを新調しますので、こういった評価がより一層の高精度でできるようになると思います。11月ともなると健診が最後の駆け込みで予約が埋まっており、最近では毎日胃カメラを行なっているような状況です。

投稿者: 三本木クリニック

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