院長BLOG

2021.09.13更新

9月11日の土曜日の午後は、東名古屋医師会臨床懇話会に参加してきました。

つまりセミナーです。「包括的リスク管理における高TG血症治療 SPPARMαの可能性」という内容で、講師は愛知医大の循環器内科高島先生です。

SPPARMαというのは比較的新しい高トリグリセライド血症治療薬で、つまり中性脂肪の治療の比較的新しい薬です。といってももう何年か経過している薬です。

PPARα とは、Peroxisome Proliferator-Activated Receptor:ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体、のことだそうで、肝臓や褐色脂肪組織,心臓,腎臓で強く発現しており、遊離脂肪酸などを生理的なリガンドとして活性化され、血中トリグリセリド濃度の低下などを導く、と。外因性リガンドとしてはベザフィブラート,クロフィブラートなどのいわゆるフィブラート系の薬物がその役割を担う薬として世にあるわけです。つまり外因の薬物となるとPPARαを活性化させる作用があるためModulatorのMがついてPPARMα、となります。

で、SPPARMαというのはPPARMαをselectiveつまり選択的に作用するようにしたもののことをいうのですね。より精度が高くなったもの、というと分かりやすいかもしれません。これにより、副作用の心配が減ります。

これまでの中性脂肪治療薬としてのフィブラート系薬というのは、高コレステロール血症の治療薬であるスタチン系と併用すると横紋筋融解という副作用を起こしやすくなるとされていて、それが腎機能が悪い人で併用するとそのリスクが高まるので、現在では併用禁忌ではないものの、かつては併用禁忌だったこともあり、なるべく併用しないようにしたい、という薬の組み合わせなのですが、脂質異常症では往々にしてLDLコレステロールと中性脂肪と両方高値である患者さんが少なくないのと、他にしっかり効く薬があまりないために、どうしてもこの組み合わせをとることがあります。そんななか、今回の選択的PPARMαつまりSPPARMαは比較的安心して使える薬だというわけです。

悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の異常高値は心筋梗塞や脳梗塞など血管合併症を引き起こすことがよく知られていますが、中性脂肪についてはあまりそこまで心配されていなかったし、いまでも、いまひとつ認知度が低い印象があります。しかし近年の大規模臨床試験の数々の発表によって、中性脂肪の適正な是正もLDLコレステロール同要員重要であることが判明しつつあります。

たとえば空腹時、非空腹時の中性脂肪がスタチン使用中の2型糖尿病患者における心血管イベント発症に与える影響、という臨床研究(EMPATHY試験)があり、それによると日本人においての研究ですが、2型糖尿病患者において、非空腹時中性脂肪が高いほど、心血管イベントの累積発症率が上昇することが報告されています。空腹時も非空腹時でも中性脂肪が高いのはやはり良くない、ということです。

今回のSPPARMα製剤というのは、この中性脂肪を下げる効果があるのと、それ以外にもLDL悪玉コレステロールの中でも一番たちが悪いとされるsmall dense LDLをも下げる効果があることが別の臨床試験でも確認されています。そしてこの薬剤では副作用など安全性についても評価し問題ないことが確認されています。腎機能の低下を来たさず、なおかつ、脂肪肝の数値もわずかながら改善したそうです。

糖尿病の患者さんというのはもともと血管がもろい体質で、ことにそれが心臓の冠動脈でも同様ということですから、非常に危険なわけです。そこへたいていはLDL悪玉コレステロールが高値なことが多いメタボ患者さんではまた心筋梗塞のリスクが高いというわけで、当然スタチン系薬剤でLDLも低下させねばならないのですが、そこで中性脂肪が高いと血管内プラークの増悪リスクも高いということで、LDLと中性脂肪と両方とも適正値にコントロールすれば、心血管イベントを有意に低下させるのだと、講演では述べられていました。つまり、血圧、血糖、LDL、中性脂肪を包括的にコントロールすることが大事なのだと。

愛知医大では心血管の情報を造影CTで確認するだけでなく、それだけでは判定できない篩い分け、つまり、心臓カテーテル検査まですべきかどうかの、より精度の高い診断を、コンピュータ解析により行うというFFRCTという手法をこの地区では唯一有する施設だということでした。造影冠動脈CTの進化版ですね。もちろん症状がないと適応がない検査ではありますが、症状があって、この検査を希望される方は紹介しますので相談ください。これにより、無駄な入院と心カテ検査を省略することができるそうです。

さて今回は私はいろいろ質問をさせてもらったのですが、まず、LDLを下げると相対的にTG(中性脂肪)が上がることが日常臨床としてあるのですが、そういうシーソー現象の機序は?という質問です。残念ながらこれについての答えはまだないということでしたが、たとえばTGを薬で下げることによって、LDLが少し上昇した場合でもそのLDLの内訳は超悪玉の成分であるsmall dense LDLの比率は下がるということは分かっているそうです。

2つ目の質問は、フィブラート系薬を使用してもTGが下がりにくい人というのは総合的メタボ疾患患者さんに比較的多い印象があるけれど、その場合、LDLが正常範囲だとしてもさらにスタチンを強化したらTGを下げられるか、という内容ですが、それについては「おそらく無理だろう」とのことでした。一応、ガイドラインでは、中性脂肪が高値の場合に使用する第一選択薬はスタチンである、と記載されているので、フィブラート系とを併用しているにも関わらずなお下がりが悪いTGの場合にどうしたら良いかという質問だったのですが、どうやら難しいようです。

3つ目の質問は、週刊誌などでは定期的にスタチンを悪者扱いする記事がでて患者さんを惑わせることが毎度あるのだけど、なぜ週刊誌はそういう記事を載せるのか、その根拠となるエビデンスはあるのか、という質問については、週刊誌はそういうことによってやはり売上を良くする目的だろう、と。また、惑わせる根拠となっているエビデンスとしては、癌の末期や老衰で死を間近にしている人において、さすがに低栄養状態だから自然にLDLコレステロールは低値だけど、そういう例をひっくるめた疫学調査でもって、低LDLは死期を早める、という短絡的な結論を導いてしまったのだろう、ということで、それ以外の論文的な根拠は皆無だということでした。

週刊誌の問題については、昨今のコロナワクチン問題にも当てはまると思います。感染症や呼吸器の専門家でもなんでもないような精神科医とかが、「コロナワクチンを打つべきではない」などと真剣に信じ込んでしまって、有料のセミナーや講演を開催したり、有料のメルマガや、宗教じみた著書を出して、それが異様にベストセラーになったり、莫大な利益を得たりしているそうで、そりゃあ、自分が妄信したことを高評価されて儲かるなら、もうやめられませんわね。そういうのと週刊誌の売り上げというのは似たところがあるんだなあと思います。

悪質なデマが蔓延る原因としては、コロナウイルスやワクチンのように、100%メリットだけである、というものではない、デメリットも多少あるけど、という、フワフワした対象だと、そういうデマが信じられる土壌になりやすいそうです。

情報は正しいものを常識的な脳みそによる判断力でもって取捨選択しなければならない。SNS蔓延時代にはより一層の注意が必要ということです。

 

ともあれ、乱文になりましたが、とりあえず一昨日の講演会セミナーの報告とします。今後の診療に生かしていきたいと思います。

 

投稿者: 三本木クリニック

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