当院で鼡径ヘルニアの根治術を受ける利点についてはいろいろ挙げられると思いますが、ここで一度整理してみたいと思います。
1.日帰り手術であること。 いまでは鼡径ヘルニアの日帰り手術はそれほど珍しくはないかとは思いますが、実際に市民病院クラスの総合病院では通常は入院となると思います。かつ、最近では腹腔鏡による手術が増えてきており、そうなると気管内挿管を伴う本格的全身麻酔を必要とし、当然その場合も入院での治療です。気管内挿管を伴う全身麻酔では、その麻酔法自体が侵襲が大きく、心臓や肺に負担をかけますので、術前の血液検査、心電図、胸のレントゲン、呼吸機能検査などを要し、手間暇と費用がかなりかさみます。なおかつ、腹腔鏡の手術は、鼠径部と関係のないおへそ部位を主体とする数か所の小さい傷をあけることで、一つ一つのキズは小さく目立たず、鼠径部には逆に一切キズをつけないのですが、そういう傷であることには良し悪しがあるかと思います。良い点としてはおへそのキズは上手に縫合すれば比較的目立たない。悪い点としては腹腔内癒着を来たすリスクがわずかながらあるということや、そもそも関係のない場所に傷をつけることの違和感といったことがあると思います。一方、鼠径部直達手術の場合、鼡径部の傷は下着に隠れる場所なので、もともと目につきにくいことと、ランガーの皮膚割線に沿った皮切をするため傷跡はどのみちほとんど目立たなくなります。従来、総合病院でも脊椎麻酔と鼡径部直達手術が主流だったですが、近年では全身麻酔での腹腔鏡の手術が総合病院クラスの病院で広まっているのは何故かというと、単純に保険点数つまり医療費を稼げる術式だからというのが病院経営からみた理由です。結果として同じ目的の手術をするのに、術前検査、手術自体の費用、そして入院費と合わせると、相当の利益となります。もちろん、入院治療であっても生命保険などで還付金が見込める患者さんや時間に余裕がある患者さんにとっては問題にはならないことでしょうが、医療費を安く済ませたいとか、日帰りで、とか、不必要な検査をしないで済む、となると、当院の日帰り手術はまったくもってリーズナブルすぎると言えると思います。そしていまの時代では日帰り手術でもちゃんと生命保険の還付金が請求できて、当院の費用の場合、おそらくおつりがくるほとになるかと思います。
2.麻酔の方法 当院では静脈麻酔と局所麻酔のコンビ麻酔で、患者さん本人は眠っているうちに手術を受けられます。手術が終わって覚醒したときも痛みがありません。静脈麻酔は体重と年齢により自動的に注入量をコントロールしてくれる機械を用いており、安定した麻酔深度を提供できます。薬剤のレシピは当院オリジナルの内容で、リスクの少ないバランス麻酔とでもいうべき内容にしてあります。それにより、すぐに入眠でき、すぐに覚醒できるコントロール性を有します。ですので、自動車で来院でき、帰りも自動車で帰れるのです。付き添い人も不要です。
3.手術日の病院滞在時間が短いこと 他の大病院で腹腔鏡の手術でヘルニア根治術を行う場合、まず手術室に入室し、(事前に病棟でルート確保はしてあることでしょう)各種モニターを装着し、眠り薬と筋弛緩剤を投与され、眠ったら気管内挿管され、人工呼吸器が備わった麻酔器につながれます。その後、全裸状態となり、広範囲に皮膚消毒をして、尿道カテーテルを挿入留置され、というプロセスを経ていよいよ手術の手技へと移行します。手術はおへそなどの小さい傷から細い鉗子などで腹腔内部から鼡径部へアプローチし、腹腔側から腹膜を切開してヘルニアの袋を処理し、再発防止にメッシュを留置固定し、腹膜を縫合閉鎖します。この手術手技全体としてはやはり早くても40分から、程度により1時間は普通にかかることでしょう。そして手術が終わったら、麻酔から覚醒させ、気管内チューブを抜去、尿道カテーテルは原則的に留置した状態で手術室退室、となります。入室から退室まで早くて1時間半、遅いと2時間といったところが平均的な所要時間と思います。 一方、当院での場合、まず来院されたら処置用の着物に着替えていただきますが、その際下着は処置用の紙パンツに履き替えていただきます。ルート確保と酸素、モニター装着し、紙パンツの一部、つまり鼠径部の部位だけを切り開いて患部の10cmほどの部位だけを見えるようにして手術に臨みます。気管内挿管のない、侵襲の少ない麻酔法である静脈麻酔と局部麻酔のため、尿道カテーテルは挿入しません。下半身も上半身も裸になることはなく、医師は私だけ、看護師も1人だけですから、何人もの人に見られることもありません。通常の鼡径ヘルニアの手術では医師2人で行うか、医師1人と介助看護師1人で行うかというパターンで、かつ周囲に外回りの看護師が数人、というのが普通だと思いますが、私は完全に一人だけで行います。看護師1人は外回り役です。そのため少し時間はかかりますが、大体それでも50分から1時間です。たとえば医師2人で腰椎麻酔で鼡径部直達法でやれば通常は手術そのものは30分程度で終わるというのが一般的でしょうけれど、私は局所麻酔を主体としてやるので、手技の途中途中で細々と局所麻酔操作を必要とし、ゆっくり作業を進めていくため、かつ一人でやるためにそういう時間を要するのです。ただ、それでも手術室に入室がだいたい13時45分として15時10分に退室となり、手術の説明をして会計をすればもう15時25分くらいには帰路につけるのです。だから1時間半程度の滞在時間で終わるのです。すべて込みでこの時間です。
4.術後の痛みが少ないこと 私のやり方は表面の傷のサイズは普通ですが、内部の傷をなるべく少なく済ます方法ですので、術後の痛みが非常に少ないです。通常の鼡径部直達法では、麻酔が切れたら翌日はスタスタ歩くことはなかなか至難ですが、私のやり方では翌日の診察時に体を前屈させてびっこをひく歩き方で来院されるケースは稀です。若い人でもほとんどスタスタ歩けます。訊けば「痛いですね」というのですが、それは体位変換時とかの、鼠径部に力を入れるときや、患部側の大腿を伸展させるときに限定しています。ですので、鼡径ヘルニアの手術ですら、翌日からデスクワークなら可能となるのです。ちなみに、腹腔鏡による手術でもおそらく痛みはあまりないと思います。そこは直達法のほうがやはり痛みの面では負けます。
5.手術時のストレスや羞恥心の負担が最小限であること 既述した内容と重複しますが、手術室には私と看護師の2人しかおらず、全身裸になることもなく、尿道カテーテルを留置することもなく、鼠径部の患部を、紙パンツを一部切って窓を開けるようにして手術をしますので、基本的に患部以外を露出することがありません。術前術後の着替えなども患者さんだけで行いますのでよほど必要がなければ誰も見ることはありません。手術室もいろいろな機械は並んでいるものの、こじんまりとした部屋ですから、なんら緊張することもありません。最初の血管確保と、表面の麻酔注射を最初だけ、覚醒状態で行うので、それだけはその時少々痛みがありますが、それ以外は安楽に眠っていただけます。寝てるうちに手術は終わります。老若男女問いません。もちろん、一部に例外はあって、必要に応じて麻酔の深度を深くしたり浅くしたりというのはありますけれど。
6.費用が安いこと 大体、保険の3割負担の方で、窓口での負担は3万円弱です。当院は人工呼吸器つき麻酔器なども使用しませんし、日帰り入院の扱いすらしませんので。こんな費用でできてしまうのです。保険医療ははっきりいって安すぎます。当院では、必要がなければ事前の検査や処方はしませんので、術前の手間暇と費用すらほとんどかからないのです。
このようにいろいろな利点長所がありますので、鼡径ヘルニアで治療はしたいけれどいろいろと不安があるからなあという方はどうぞ当院にご相談ください。