当院ではときどき下肢静脈瘤の患者さんの相談を受けます。
手術適応があるものと無いものとありますが、手術適応のあるもののうち、症状を半減もしくはほぼ消失させることができ、なおかつ非常に侵襲が少ない方法があります。
それを当院では行なうことができます。
高位結紮術という術式です。これは費用対効果が非常に高い、かつ、安楽に終わる手術です。外科医が2人で向かい合ってやるならば15分もあれば終わるような手術ですが、当院では医師は私一人であるので、30分ほどかけて行います。とはいえ、やる内容はあっけないほどの手技で、卵円窩という部位から皮膚切開し、皮下脂肪をかきわけたら直下にある大伏在静脈を露出し、大腿静脈本幹から分岐したところで結紮します。付近の第一枝の静脈も結紮します。大伏在静脈の切断は敢えて行わないこともあります。
この術式では、通常局所麻酔だけでOKですが、不安のある患者さんの場合には希望に応じて、事前に眠る麻酔を選択しておいて併用しても良いかもしれません。その場合でも対応可能です。
対して、ストリッピング手術はどうかというと、これはなかなか大変です。普通に入院が必要となるでしょうし、術後の痛みや安静維持などの日常生活制限があります。
たしかにストリッピングを行わなければならないような症例では、高位結紮術だけでは完治させられないかもしれませんが、まず侵襲の少ない、日帰り30分で終わるこの術式をしてみてから、それでも改善しなければ改めてそのストリッピング(大伏在静脈抜去術)を選択すればいいのだと思います。そういうことも選択できる、ということです。
近年レーザー治療も普及してきており、専門施設ではストリッピングの代替として血管内レーザー治療もやられているかとは思いますが、機序的にいって、そうそううまくいかないだろうことは容易に想像がつきます。また、不十分な治療となるリスクが普通にありますから、遊離する血栓を誘発するリスクもあり、つまりエコノミークラス症候群的な肺梗塞を誘発する危険があるため、私はレーザー治療をお勧めはしません。当然入院治療が必要な術式でしょうし、当院では行なっておりません。おそらく、レーザー治療をする場合でも高位結紮はしておいた方が安全でしょうから、そうなると高位結紮だけ最初にしてみてから判断する、でも良いのではないかと思います。
問題なのは病院側にとっては利益が少ない術式だという点です。当院では本質的医療の提供をモットーとしておりますから、安くても良い治療は良いんだというポリシーでやっています。これは鼡径ヘルニアの手術でも言えることです。
なお、下肢静脈瘤の手術は、当院では入院が必要なストリッピング術は行なっておりませんが、たとえば高位結紮のみでは消褪しきれなかった下腿の静脈瘤については部分切除を行うことで対応可能です。目立つところを直接直下に小さい傷により可及的に除去する方法です。これもまた、局所麻酔で行えます。正直言って、それでもう十分ではないかと実際思っています。