院長BLOG

2020.02.13更新

昨日は夜、豊田厚生病院で開催された、がんフォーラムに参加してきました。

いわゆる疼痛緩和ケアがテーマで、「がん疼痛治療の最前線」と題し、はるばる沖縄の徳洲会病院から、疼痛治療科の服部政治先生が愛知県にいらっしゃっての講演。

今回の講演はひさしぶりに凄いインパクトがありました。

現場での患者さんの実際の映像、治療前後での劇的な変化を何症例も紹介され、これまで20年もの間、服部先生がさまざまな学会で、疼痛緩和ケアにはモルヒネ製剤だけでは片手落ちであり、総合的な、麻酔科的アプローチや放射線治療なども含めた戦略を必要とする、という話をさんざん啓蒙しているにも関わらず、相も変わらずそのことが広まっていない、従事する医師の配置がなされていない病院がほとんどであることを、恥ずかしながら初めて知りました。

驚くことに、終末期のがん患者さんのアンケートによれば、最期までの1か月で、痛みを主とする苦痛が緩和されなかったとする比率が1996年と2018年と比較して、ほぼ同等の40%で変わりなかったとする結果がでているそうです。これまで国が主導者として、がん患者の緩和ケアの啓蒙活動を散々行なっているにも関わらず、何の改善もなかった、ということを意味します。

私もたしかに2日間連日を費やした緩和ケア研修を受けておりますが、そこでの主たる授業内容は、基本中の基本、モルヒネ製剤をどう教科書的に使うか、ということだったと記憶しております。日本ではその基本すらもあまり実行されていないという現実からスタートしているからです。

しかしその啓蒙活動の20年の結果、改善がなかった、というのはゆゆしきことです。モルヒネ関連製剤の種類がいろいろ出て来たことによって、シビアな内臓痛や体性痛にもすべて対応できるという錯覚に陥っているように思う、という服部先生の指摘に、思わず膝を打ちました。

先生が言われるのによると、神経叢をエタノールやフェノールにより化学的に壊死させて除痛を図る方法や、脊髄神経へのアプローチとして脊髄鎮痛法(硬膜外への麻酔薬とモルヒネ製剤の投与や脊髄くも膜下腔への投与)や、早期からの放射線照射治療をもっともっと活用してあげなければ、残り短い貴重な人生の最後の時間を有意義に過ごさせることができない、というのです。

実際に、口腔外科領域、整形外科領域、内臓領域のさまざまな癌によるヒドイ痛みで、座ることや呼吸することや仰向けに寝ることすらできない患者さんに、脊髄鎮痛法を施行することにより、即座に安楽を与えることができた実例をいくつか映像も含めて紹介され、非常なるインパクトを受けました。

「抜苦与楽」こそ、医療の本質である。形式主義やワンパターン思考ではなく、ちゃんと患者に向き合ってやれることをもっとやるべき、ということを大変に教えられました。

私はクリニックの医者ですので、大した緩和医療には携わらないのは確かにそうなのですが、それでもたとえば老人施設で最期を迎える高齢者を安楽に過ごさせることはかなりできていると自負しています。しかし、そんなレベルとはけた違いにかけ離れたシビアな若いがん患者さんの尋常ならざる苦痛を劇的にとって楽にしてやることができるのも、勤務する場所は違えど医師に違いはないということで、何かしらの形で抜苦与楽を実現していきたいと、改めて思った次第です。

 

投稿者: 三本木クリニック

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