昨晩は認知症とてんかんについての講演で、はるばる東大病院からの先生が来られての「高齢者の認知症、てんかん診療の基本」と題した内容の勉強会に参加しました。
この寒い時期に、木曜夜にわざわざ名古屋駅付近のホテルまで出向いて勉強する医師らの気概にはちょっと嬉しい気持ちがある反面、年々こういう講演会は減少傾向にあるのは寂しいです。企業の経費削減の意図があるのでしょう。医師への利益供与にあたる、などという言い訳を盾にして、、。仕事終わりざまに空腹で会場に直行して、水だけ1杯もらうだけで1時間半の間、真面目に受講している側の立場はどうなるのだと言いたいです。
ともあれ、今回の講演は基本的なことを明快に勉強しなおす点で大変分かりやすく、弁舌明瞭、スライドも見やすい、さすが東大の偉い先生は語り慣れているなあと感心しました。感心などというと上から目線のような言葉に聞こえますが、とんでもないことです。下から目線です。当然。東大の先生の前に講演された名大の先生のスライドはめちゃくちゃ細かくて見えないレベルだったので、余計にコントラストがでてしまいました。名古屋も頑張って聴講者目線を持っていただきたいものです。
さて、今回のポイントは、
高齢者でも初発のてんかんは決して少なくないこと、
認知症とかまだらボケだと思っていたら実はてんかんだったということが実はあること、
脳波異常がでない(異常発火部位が側頭葉など深部にあって表層の電極では分からないタイプ)ケースもあること、
アルツハイマー型認知症にてんかんが併発しやすいこと、
高齢者てんかんの多くは部分発作といって、いわゆる倒れてしまう全般発作タイプではない、ということ、
高齢者のてんかんには副作用の少ない新規抗てんかん薬が望まれる、
などといった点が印象に残りました。
てんかんについては、大病院に紹介してもうまく診断できないことがあり、かなりの専門性というか、てんかんについての洞察力が必要に思います。型通り脳波を調べても一見異常なしで見過ごされることは決して稀ではないそうで、実際そういう例でも臨床的判断で治療を開始したら長年の見過ごされてきたてんかんが治癒寛解したというお話も多々紹介されていました。
認知症の中で最も多いアルツハイマー型にてんかんが合併しやすいということも非常にインパクトのある話で、それは一般開業医、町医者こそ、認識しておくべきことだろうと思いました。日本の今後、超高齢化社会において、こういう潜在的な疾患も意外にあるものだという認識をすべき、ということです。