院長BLOG

2019.11.22更新

「急性心臓死」という言葉についてです。

昨日、ある芸能人が急死されたと報道があり、その病名で、「急性心臓死」、という名称の死因が出ていましたが、

このような間違った医学用語が出回ることに、違和感を禁じ得ません。というか、間違った医学用語です。

医学病名については、例えば、ICD10という、現在の日本において、保険診療上使用できる病名として登録されているリストがあるのですが、そこには、「心臓死」、などという言葉は存在しません。
医師は、あくまでも病名のルールを守って死亡診断書に記載しないといけません。
今回、急性心臓死なる病名は、この患者さんを担当した医師が勝手に作った造語である、と私は考えます。

そもそも、臓器名に死をつけた病名というのは原則として存在しません。死、というのは、人間などの動物が、一個体が全体として命が終わった状態を指します。ですので、臓器別に死、という概念は言葉として間違っているのです。
肝臓死、腎臓死、という言葉がおかしいのと同様です。

脳死、という言葉があるのは、脳だけは特別の器官だから与えられた病名であって、心臓の場合には、心臓が止まったら自動的に、その時点でたとえ脳が生きていようが死んでいようが、個体は全体として死ぬのですから、「心臓死」などとあえて表現しなくても良いのです。というか、そのような表現をしてはならないです。

朝の朝食を食べた、といっているようなものです。意味が重複しています。

死亡診断書では、人が癌や肺炎などが原病で死ぬとき、最後は心停止して死ぬわけですが、その最終末状態である心臓停止の状態をしてあたかも根本的死因のように扱って「急性心不全」といった病名をつけないように、というルールがあります。つまり、癌が悪化して最後心停止に至ったのであれば、その場合の直接死因は「癌」、というのが正しい死亡診断になるわけです。ところが、事前にそういう持病がなく、突然心筋梗塞か何かによって心停止を来してしまった場合には、それが死ぬ直前に、諸検査で原因となる病態が把握出来た場合には、たとえば致死性不整脈、とか、急性冠症候群、とか、心筋梗塞、とかいう病名がつけられるのですが、すでに心停止してしまっていて、検死となった場合には、髄液検査や、心臓内血液の採血検査といった簡易的検査によって、脳出血か心筋梗塞かの判別はできます。もしくは、近年では死後のCT検査なども診断のために施行されることもあります。それらの死後検査を行わない場合には、やはり原因不明ながら急性心不全と記載せざるを得ないと思います。「急性心不全」という病名を絶対に回避しなければならないということではなく、できるだけ直接死因を記載するように、ということに過ぎません。ですので、むりやりおかしな病名を作ってしまってはよろしくないのです。

現代では医療分野の技術革新がめざましく、診断および治療の面で恩恵を受けられるすばらしい時代であることは良いのですが、それらを使いこなす医師がもっとしっかりしなければならないです。
基本的な医学用語、日本語が間違われてしまうことはかなり恥ずかしいことと自認しなければならない、と、指摘しておきたいと思います。

 

投稿者: 三本木クリニック

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