院長BLOG

2019.07.05更新

最近は研究会が多くて、昨日も一昨日に続いての参加です。

心不全合併糖尿病患者におけるSGLT2阻害剤の効果、についてと、

心不全ガイドラインからみた最新の糖尿病治療について、という2題の講演でした。

摂取カロリーを尿に逃がす作用のあるSGLT2阻害剤という糖尿病の薬は、心血管系合併症死を明らかに減らすという明確なデータをもつ唯一の糖尿病治療薬です。そしてこの薬は電解質に影響を与えない利尿効果、しかも今回の講演では、血管内脱水を来たさずしてむくみを除去するという利尿効果があるということが説明され、この薬、基本的にメタボ体型の人が対象となりますが、非常に有効、延命効果のある薬ということになります。

今回はとくに心不全に関連した内容で、これが体うっ血(右心不全)性の心不全にとくに有用であること、そしてただ単に利尿効果があるというのみならず、IL6やCRPといった炎症マーカーの低減も来たすことから、血管炎の改善効果もある、ということも示唆しています。一般的に外来でみるような心不全は慢性の疾患なので、糖尿病がある心不全患者さんで、まあそれは大抵は太った老人ということになるのでしょうが、この薬を長期的に服用することで、1年、2年、というスパンで心不全がますます改善するというデータも示されました。利尿剤というと血圧の低い心不全患者さんには使いづらいのですが、このSGLT2阻害剤に関してはそういうタイプにも支障を来たさないので安心です。つまり血管内脱水を来たしにくい、というわけです。

また、腎臓の保護作用についての作用機序も判明してきており、これは糸球体の高血圧を改善することによる、尿たんぱく改善効果がある、というものです。ただし、糖尿病は糸球体のみならず、尿細管、これが実に腎臓ではすごい働きをするのですが、この尿細管の虚血を呼んでしまう糖尿病では蛋白尿が改善してもなおGFRという腎機能の指標が悪化するという現象がみられるというのですね。ですので、SGLT2ですべての糖尿病の悪さを解決できるわけではないので、それは留意すべきことでしょう。

血管に関して言えば、糖尿病は血管炎を引き起こす疾患ですが、動脈硬化といえば、ちなみに、末梢血管が硬い、動脈硬化の体質の人は血圧がどうなるか、というと、ちょっとしたことで血圧の急激な上昇を来たしやすいのが特徴です。血圧変動が大きい人は、動脈硬化が強いとみるべしです。具体的には、ちょっと歩いただけでグンと血圧が上昇してしまう、それが普段血圧の治療をしていて安静時には正常なのに、というやつです。また、血圧の上の値と下との差が激しい、つまり、脈圧開大するタイプ、こういうのも動脈硬化があると推定されます。こういう古典的高血圧タイプには利尿剤というよりは、そしてARBというよりも、カルシウム拮抗剤が第一選択となる話も今回でました。

そして、私も若いころからあるのですが、変時不全、という言葉があることを初めて今回知りました。これは、心拍数の反応が遅いことをいいます。たとえば少し歩いたりジョギングしたりすると、適度に心拍数が上がってくる、そして安静にすればまた落ち着く、という反応の遅さのことです。これは動脈硬化とは別のことで、副交感神経の活性不良によるものだということです。これは腎臓の脱水や虚血が関与するそうです。腎臓の血管に巻き付いている自律神経の反応が鈍くなるということですね。とくに交感神経でなく、副交感神経の活性不良、というところがミソです。この変時不全は、不整脈を誘発しやすいということも今回初めて知って、確かに自分だわと思い知ったわけです。そしてそれではこれにたいしてどう対応したらいいのか、についてまでは解説されませんでした。が、腎臓虚血をなるべく予防するようにこまめに水分を補給することと、自律神経訓練をすることあたりがおそらくは対処法となるだろうと考えます。

それにしても、専門家というものは、一つのことを本当に突き詰めて細かいことまで研究するものだと感嘆しました。私は専門家ではないので、各界の専門家の知識経験を少しでも学んで臨床の場に生かすこと、それが自分のクリニシャンとしての立場だろうと思います。心臓だけでなくすべての臓器について。

 

投稿者: 三本木クリニック

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