院長BLOG

2018.12.27更新

1996年にエベレスト登山隊に実際に起こった大量遭難死事故を扱った映画「エベレスト」を観ました。

DVDで映画を見るのも久しぶりなことですが、この映画、見終わったあとの救われない感、そしてその原因としてリスク管理がずさん過ぎること、それで結果として簡単に何人も凍死することになってしまったことに憤りを感じました。

エベレスト登頂など豊富な登山経験のある人物が、エベレストの商業登山ツアーを定期的に企画し、それに応募したアマチュア登山家たちで構成された登山隊、というものですが、

1.エベレスト登山には最適な時期というのがあるようで、それがゲン担ぎもあり、5月の同じ日(ラッキーとされる日)に他国からも多数登山隊が登るラッシュ状態になってしまった

2.それらの各国からの登山隊らには何の連携やルール調整もなされない

3.午後2時には引き返さねばならないルールを、どうしても登りたいというツーリストの無謀な要求に安易に妥協(それが大金を払ってのツアーだから余計にそうなりやすい)してしまうことで大幅にルールを破ってしまったこと、そのルールも厳しく強調しなかった

4.おそらく前年までの実績ではうまく登頂できなかったことが続いていただろうこと(だから結果を出そうと焦ってしまう)

5.エベレスト登山での事故は登頂後のものが多い、という事実を軽視した

など、まだまだ挙げればいくつかあるだろうリスクを無視、もしくは管理しない状態だった。それゆえに当然起こるべくして起こったと思います。

ハインリッヒの法則というのがあって、それは、概念的な説明として私が理解するに、何かアクシデント、インシデントが起こるためには、背景にまず1つのリスク放置、そしてその中にまたあるリスクを放置、さらに、というように、いくつかの要因が重なって大事に至る、というものです。

実際の臨床現場でも、そういうことは少なからずあります。だからこそ、大学病院のICUにて治療中の患者さんが頚部疾患での手術後、後出血で窒息死するなどという馬鹿げた医療ミスが起こるし、小児に適応のない鎮静剤を過量投与する(それもICUでの出来事)などという、もはや殺人事件といえるようなことが起こるのです。

今回の映画の話に戻りますが、映画を見る限り、エベレスト登頂という、世界で最も難しい登山にしては、やはり契約内容の不備(例えば、鉄則ルールに従わない場合にはいくら温情的事情があろうとも以後は自己責任とする、などの契約をしっかりすべきだった)、計画の甘さ(他国の登山隊で渋滞することを予想したり事前に調べたりしなかった)、引率者の過信(自分がなんでもフォローできると思っていて結局自分も他人も、自分を助けに来させた仲間も死なせてしまった)、経験豊富といっても所詮は素人集団であって、それにしてはメンバーの数が多すぎた、といったことなど、他にも挙げればいろいろあるだろうミスがいくつも垣間見えます。

比較的最近では日本でも北海道トムラウシの縦走という難コースを軽装かつ初心者を大人数率いたツーリズムで何人もの人を死亡させた事故が記憶に新しいところですが、

それこそ猿投山ですら、夜や雪は危険だし、百名山などの有名な山の登山はもっと危険がたくさんある、ということを、ベテランですら忘れてしまうのでしょうか。いえ、ベテランだからこそ、軽く考えてしまうようになるのかも知れません。それは自動車運転や、仕事での作業などでも言えることかと思います。

登山は言ってみれば遊びであり、そこで死ぬのも本望か、という考えもあるかもしれませんが、仕事現場、医療現場ではそういうことでは絶対に許されません。

なかなかバランスが難しいことではありますが、とにかく、誰が見ても「そりゃ駄目だろう」と思うようなミスの連続、重なりは、命をいくつも失うことになる、ということです。プロのくせにルールが守れないような人に、どうして命を預けることができましょうか。

 

 

投稿者: 三本木クリニック

  • まずはお気軽に
    当院へご相談ください
    内科/小児科/肛門科/外科/形成外科/皮膚科/美容
  • common_tel.png