院長BLOG

2018.05.28更新

土曜日は表題の会に参加してきました。

豊明市が施策として、市民のCKD対策をしていることの報告ということで、市政がなにをできることがあるのだろうかと興味を持って出かけました。

CKDは慢性腎臓病の略です。愛知県の人口比率に比し豊明市は慢性腎不全で人工透析をしている患者さんの率が多いということで、豊明市の開業医で腎臓専門医である水野先生の働きかけにより、これを市の対策として何とか改善できないものか、ということが始まりだとのことでした。

5年前にそういうことで何かしらの取り組みを開始した、結果報告、ということだったのです。

市の政策として何をしたかというと、腎臓病教室の開催(定期的に行われたかは不明)、住民健診の結果腎機能が悪い患者さんの病院受診歴の確認、重度腎機能低下住民への訪問による治療勧奨活動、といったことのようです。

その結果どうだったか、というと、当然無作為比較試験ではないので、評価は難しいのですが、私が今回の講演を聴講しての印象としては、とくに効果なし、というものでした。

そのことは主体となってやられている関係者や水野先生も分かっているようですので、ここでそのように記述しても差支えないと思いますが、その上で、今後の課題として挙げられていたことは、やはり健診受診率を高めることと、腎機能が著しく悪い住民には腎臓内科専門医受診を勧めるよう、病診連携も含めて啓蒙していくこと、という内容でした。

 

まあ、豊明市は日進よりも人口が少ないのに、こういうことを、水野先生の働きかけがあったからとはいえ、何にせよ対応するところはなかなか良いのではないかと思いました。

その上で、私もいろいろ質問させてもらったのですが(参加者が少ないこともあってか豊明市の事例の講演に対する質問者は私だけでした)、やはり、中等度から重度の腎機能低下住民をいかに引き出して、特に自覚症状もないうちから医療介入をして、腎臓の寿命を長もちさせることだろうと思いました。なお、透析患者が愛知県全体の率より高いということについての明確な理由は示されなかったのですが、私が思うには、透析への導入の判断を早め早め、多め多めにやられている、医師の傾向があることも大いに関与しているのではないかと。

というのも、透析治療は、比較的患者が元気なうちに導入したほうが延命に良い影響を与えるということが分かっています。また、逆に、あまり早めに導入してしまうと、それはそれで患者さんの日常生活に支障がある治療なので大変ですし、医療財政にも良くありません。透析をせずに寿命を全うするということも普通にあります。そういうことで、個々の腎臓内科医の判断はまちまちである、というのが現状だからです。同じ腎不全といっても、どこまでの高齢者に透析治療までやるのか?という問題もあります。そういうことで、単純に、豊明市の透析患者数を減らそう、ということならば、透析に至った患者さんたちの経緯を見直すことが一番直接的なやるべきことではないかと思うのです。その質問についての回答としては「なかなかそれを行政が調べることは難しい」というものでした。しかし行政は透析患者さんが誰かということは当然分かります(国民健康保険の場合は特に簡単に調べられる)。それで、その患者さんが通院している病院にもろもろ許可を取ったうえで、レトロスペクティブに調査をすればいいだけのことだと思うのですが、、。表面的に透析患者を減らすには、その患者さんの主治医を調べれば大体傾向が分かるというものです。

ただ、それをどこまで追求するか、となると、それは尻込みしてしまう、ということになるのでしょう。ならば片手落ちですが、結局は健診の受診率を上げる、ということになるように思います。そのうえで、高血圧とか糖尿病とか高脂血症といった、腎臓に悪さをする疾患を放置している住民に、適切な治療を受けるように指導する、ということがとりあえずは漠然とした目標、ということになってしまうことでしょう。腎臓病とか生活習慣病についての教室を定期的に行うことは大変いいことだと思います。これは行政にできる大きなことです。

生活習慣病を適正に是正治療することは腎臓の寿命を長持ちさせるために重要なことですが、そのために腎臓専門医だけを受診させる、ということについては私は反対です。いまどきどの内科医も、腎臓の保護のために何を治療すべきかなど誰でも知っていることです。実践できるかどうかは患者さん自身にかかっています。その指導の仕方が専門医ならではのノウハウがあるというのならば価値があるかもしれませんが、あくまでも患者さんのモチベーションに依存することには変わりないことです。もしかしたら、一般開業医から、わざわざ専門医へ紹介するというプロセスが良い意味での演出効果となって患者さんに「大事なこと」感を持たせる意義はあるかもしれません。それにより受診動機を高めることになる可能性はあります。

いまは多様化の時代で、腎臓の保護もですし、透析治療を受けるかどうかについても、患者さんが自由に選択する時代です。生活習慣病がひどいからといっても、ちゃんとした治療を拒否する患者さんはたくさんいます。それを医師がどうのこうの指導したからといって変わることは少ない時代です。それだけ患者の選択権生存権【治療しないで死ぬ権利もある】が自由です。だから、医師としてはケースバイケースで対応するしかないこともたくさんあるのが今の時代です。

 

単純に1つのテーマに関する講演とってしても、いろいろと考えさせられることがたくさんあり、結局はバランスと哲学の上に成り立つことなのかなあと思った次第です。

 

 

投稿者: 三本木クリニック

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