院長BLOG

2018.04.23更新

昨日おとといの土日はあちこちに移動した週末でした。

まず土曜日はもろもろと雑用などして、また1週間の疲れがたまりクタクタになりつつも、夕方には中津川に向かい、中津川市民病院副院長の関谷先生と会食し、いろいろと勉強になる話を聞かせてもらいました。

1泊して朝早めに日進に戻り、前日みた患者さんの処置をして、ダッシュで今度は岡崎で10時から漢方セミナーがあったので向かいました。

漢方セミナーは最近何度か続いて参加できているのですが、参加するたびに漢方学の道のりの遠さに嘆息してしまいますが、それでもやはり毎回勉強になる度合いが大きいと思います。

今回の講師はなんと私より2学年若い、脳外科が専門の來村先生という、現在は開業医をされていますが、それまでは和歌山医大、千葉大学で脳外科と漢方の専門家として研鑽を積まれた先生でした。千葉大学は私の母校ですので途中からとはいえ來村先生に親しみを感じながら講演を拝聴しました。

そしてこの先生は、千葉大学の和漢診療科に所属されていたわけですが、その科長こそが、前回ブログで紹介した寺澤先生ということで、直接漢方の大家に指導を受けたわけです。さらに、同じく千葉県内で、あきば伝統医学クリニックという、老健や特養など老人医療を漢方薬のみで対応するという特殊な医院でも漢方の専門度を深めたということで、まあさすがにそこまでやれば達人だろうと、また嘆息した次第です。

今回のテーマは高齢者疾患、痛みに使う漢方、頭痛に使う漢方、現代社会のストレスと漢方、という3題で、ざっと4時間の講義でした。

來村先生は、もともと和歌山県立医大病院で脳外科の頭痛外来を立ち上げたものの、その時点ではなかなか治せない頭痛も多く、漢方の勉強をして幅を広げるしかない、ということで、学び先を模索しているうちに千葉大学へ転勤するという縁を得て、現在千葉市で開業されているのです。ですのでもともとの専門である脳外科として頭痛、とくに実は片頭痛が非常に多いというお話から、一般的な治療のガイドライン、さらには漢方での対応の話まで、一通り分かりやすく解説してくださったので、すぐに明日からの診療の役に立つものでした。

頭痛外来というとあまり全国的には標榜されている医院病院は多くないのですが、それもそのはずです、頭痛程度なら近くの薬局や医院でまずは対応するからですね、それほどにありふれた疾患です。

病院医院の役割としては、二次性頭痛つまり脳腫瘍や脳出血など、重大な疾患からの頭痛を見分けてやることなのですが、そのほぼすべての見分けは問診でできてしまうというのですね。実際來村先生は自分とこではCTなどの大きな検査器械は持たずに診療されているのですがそれで困ったことや見落としはないそうです。さすがだとは思いますが、問診がそれほど大事だということで、問診や理学所見でこれは、という場合には当然しかるべき施設へ紹介し検査をする、というわけです。

漢方の講演をされる先生は、私がいつも思うことですが、人間性が優れていると思います。大変人柄が良いというか人間味があるというか、内科的なんですよね。今回の先生も、脳外科が専門といっても、非常に内科的な印象を持ちました。

若くしてその道のエキスパートとなるのには、やはり名の知れた名医に師事することが必要なのかなあと、実はこれまで師匠らしい師匠に巡り会わないまま生きてきた医師人生を送ってきた私からしたら、少しうらやましく思うこともあります。ただ、そういう名の知れた名医も、実は誰も師匠がいなくて独学で猛勉強したということで名医になったというケースも少なくないので、結局は自分次第なのだとも思います。そして自分はあくまでもジェネラリストである、という自負でやっていきたいと思った次第です。

前置きが珍しく長くなってしまいましたが、今回の講演の内容でポイントと思った事柄を列挙したいと思います。

まず、高齢者疾患、痛みに使う漢方、についてですが、これは來村先生曰く、高齢者は大体が「干からびた」状態であることからくる症状を呈することが多い、ということで、それにより、気力もなえるし、風邪が長引くとか、病み上がりがすっきりしないとか、肩こり腰痛膝痛、抑うつ、という状態になるのだと。疎経活血湯という、今回新しく教わった漢方は、さっそく当院のかかりつけのおばあさんに処方してみようかと思った薬で、難治性の腰痛に有効だということです。

他にも認知症に有効な、とか、抑うつに有効な、とか、気力低下に、とか各々代表的な処方を教わりました。

頭痛に使う漢方、については、さすがに頭痛外来をやられているだけあって、中身がさらに濃いものとなっていました。頭痛に使う漢方は本当にたくさん種類があるのですが、それをどう使い分けるのかということが重要で、しかしそのことについては頭痛ガイドラインには「これらの漢方は頭痛には有効である」と書かれているだけで、具体的にどのように使い分けるのかが記されていないのですね。その部分について詳しく解説していただきました。

頭痛治療ガイドラインに書かれていないけれども頭痛に効く漢方薬というのはまだまだあって、それらの紹介と、ガイドラインに書かれてるもののうち多くは実は胃薬でもあるという事実も見出して教えてくれました。

片頭痛の薬を月に3回以上服用することが常習になってしまっている場合、それは薬物依存頭痛になっているそうです。それは頑張って離脱しなければなりません。そのためには2週間ほど、トリプタンやNSAIDといった一般的頭痛薬を一切中止しなければならないのですが、その間を取り持つのが漢方薬で、2週間程それで粘れば、相当に、頭痛発作頻度が減少するそうです。

千葉大学の寺澤先生が來村先生に語った言葉として「頭痛を治すには患者全体を診られるようにならなければならない」というものがあって、つまり、内科的なことを勉強しなければ頭痛の治療を向上させることができないよ、ということです。それは開業医をしていると本当によく分かる話で、でも実は若手の専門医には分からないことなのでしょう。これはいかに患者をたくさん診る機会があるかに依存するし、専門外来だけやっていたら幅広い疾患の患者さんに出会うこともできないでしょう。そういう意味では毎日外来をやっている開業医は患者さんをたくさんみることには絶対的アドバンテージがあるわけです。所詮医学は臨床であり経験学です。

最後の、現代社会のストレスと漢方、については自分自身もストレスにさらされて生きている自覚があるため特に興味をもって拝聴しました。そこで面白い言葉を知りました。「奔豚気病(ほんとんきびょう)」という病気、というか症状名です。要するに発作性のドキドキバクバク症状であり、いまどき風に言えば、パニック症状なのですが、パニック症状の中でもより具体的な症状の1つとしてこういう病名があるというのは、昔の人は面白い表現をしたものだと。

一言でパニック障害といっても、いろいろな病状があり、またそれに対応する西洋薬もいろいろあるし、漢方薬もいろいろあります。漢方は一般的には副作用や依存性がないので、安心して使える利点があります。

東日本大震災のとき、避難生活を余儀なくされていた患者さんは、いつもの不眠症の薬を、避難所では飲めないというのです。なぜかというと、夜中寝ているときに、もし津波や地震などでさらに避難しなければならないときに、寝入ってしまって逃げ遅れることが心配だから、という。それで漢方の出番、となるわけですね。

抑肝散や四逆散や黄連解毒湯といった、眠剤としても使える処方例を紹介していましたが、睡眠障害に効く漢方は、添付文書の効能書きからピックアップするだけでも17種類もあるのですね。

30年来の頭痛が釣藤散で雲散霧消したという老人の例なども紹介されていました。

ちょっと書ききれないのでいったんこれで終わりとしますが、他にも大変勉強参考になる話がたくさん聞けて、大変有意義な勉強会でした。漢方診療については、私が将来、老医になったときに、主として扱っていこうかと思っている診療であり薬なので、今後もさらに少しずつ勉強したいと思います。

 

投稿者: 三本木クリニック

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